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「おはようごさいます」
おうっ、と俊太はいつもの調子で右手を振りかけたが、すんでのところで思い留まった。すでに学生ではないし、教師たるもの、生徒には毅然とした態度で接しなければならない。
「おはよう」
俊太は爽やかに微笑み、朝の挨拶を交わす。
対になった獅子の彫刻がある広いロータリーには、右を見ても左を見ても男しかいない。その上、制服を着崩した不良学生がひとりもいない。どこにでもひとりぐらいおかしな生徒がいるものだが、ものの見事に見当たらないのだ。さらに、教師に反抗的な生徒もいない。バロック調の校舎の窓からゴミや空き缶は落ちてこない。
……おいおい、ここは楽園なんか?
どうして、ヤンキーおらへんのや?
ヤンキーはどこかに隠れているんか?
髪の毛を染めている生徒もカラーコンタクトの生徒もおらへんのか?
金髪も銀髪も茶髪も青い瞳も水色の瞳も緑色の瞳も生まれながら外国人生徒だけや、と俊太は校内の光景に感動した。
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