信長の時代より~俺は巫女じゃなくて教師だ~

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 享和学院は良家の子息が集うエスカレーター式の私立校だが、学生の本分を逸脱すれば容赦なく退学処分になることでも有名だ。どんなに寄付金を積み、権力を行使しても、学校側が下した退学及び停学処分は覆せない。厳しすぎるという批判はあるが、誰も享和学院には異議が唱えられなかった。創立者が戦後の日本を救った影の立役者であることも関係しているらしい。 「先生、おはようございます」  時計台の前に通りかかった時、中性的な容姿の生徒が一礼した。確か、一年生代表であり、享和学院のお手本に指定されている優等生の森加陽だ。中等部では生徒会長を務め、その優秀さは校内のみならず他校にまで轟いたという。  加陽に『先生』と呼ばれて、俊太の胸が熱くなった。 「おはよう、いい朝だね。天気予報が思い切り外れた」  晴れ渡った空に白い雲が浮かび、頬を撫でる涼やかな風が爽快だ。おまけに、非の打ちどころのない加陽に教師として遇され、俊太のテンションはいやでも上がった。けれど、必死になって教師の顔を作る。 「はい、享和のジンクスです」
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