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加陽が軽く微笑んだだけで周囲が華やぐが、一年生の資料に添付されていた写真で見るより何倍も秀麗な生徒だ。身長が高くなければ、男子には見えないだろう。
「……ああ、享和の入学式はいつも晴れ、っていうジンクスだね。理事長にお聞きした時は半信半疑だったけど、疑ってしまったことを詫びなければ…………いっ?」
俊太は享和学院に纏わる逸話のひとつを口にしながら、加陽の背後にのっそりと現れた男子生徒に視線を止めた。
その瞬間、手足を斧で切り落とされたような気がした。
怖い、怖くてたまらない、怖いなんてものではないかもしれない、罵倒される、殴られる、蹴られる、嬲り殺される、焼き殺される、と俊介に経験したことのない恐怖心が走った。
一七〇センチの俊太より一五、六センチぐらい高いだろうか、見上げなければならない長身の生徒には見覚えがある。一年生代表の加陽と同じように享和学院の誇りと称されている六郷和臣だ。こんなに恐ろしい男なんて、俊太は夢にも思わなかった。顔立ち自体は凛々しく整っているが、身に纏うムードが冷たすぎるし、生まれ故郷で見た暴力団関係者よりずっと迫力がある。
「……おい」
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