その子の記憶

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テレビでやかましいくらいに猛暑だと繰り返していた、あの蒸し蒸しと酷く暑かった夏の日にも、お盆休みを利用して父と母と僕の家族三人で田舎へ帰っていた──。 「ターケーシくん!」 僕が来ているのを知ると、その子はいつも遊びに誘って来た。何もない田舎で過ごすことが退屈でたまらなかった僕は、誘われるといつも喜んで遊びに行っていた。 ただ、たてまえ上では仲良くしていたけれど、まだ4歳だった僕より二つ三つばかし年齢が上で小学生だったその子は、ことあるごとに年長の余裕をひけらかすことがあって、それがいささか鼻につくことが多かった。 「タケシくん、ねぇこれ持ってる?」 それは、真新しいシャープペンだったり、戦隊ヒーローが表紙のノートだったりと、今考えれば他愛のない物でしかなかったけれど、当時の僕にはどれも羨ましくて仕方のないものだった。
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