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私、姫乃は、家の前から続く山手の小道を辿り、近所の墓地へ来ていた。お供えは、焼き鳥。ちょうど一年前、唐突に死んでしまった幼馴染、衛介の大好物だった。
彼は学校からの帰り道、いきなり倒れて、そのまま息を引き取ったらしい。ちゃんと冷たくなった遺体にも触れたし、お葬式にも行ったのに、私はそれを未だに信じられずにいる。
焼き鳥からぷーんっと甘くてジューシーな香りが立ち上っていた。朝も早くから備長炭を使って焼いてきた私のお手製だ。こんなことしてる女子高校生なんて、日本中探しても私ぐらいだろうな。
「衛介、焼き鳥をこのままお墓の前に置いておくのは良くないから、私が代わりに食べるよ。いいよね?」
二人で学校帰りに立ち寄ったスーパー前の焼き鳥屋台。じゃんけんで負けた方が奢ることになっていた。勝率は衛介の方が上。でも、なぜか衛介がお金を払っていることの方が多かった。
「ありがたく食べるように!」
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