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男の子になっちゃった
人混みの中に紛れ込む。ひたすら走る。恐怖が私を駆り立てる。石畳の道は、田舎暮らしで野山の柔らかい地面に慣れている私の脚には少し負担だ。でも、体を動かし続けることで何かを誤魔化し、振り切ろうとしている自分がいた。
大通りを真っ直ぐ行くと、また大きな道に出て、その通りの突き当りには巨大な真っ白の城がそびえている。私は、ふと白鷺城を思い出して足を止めた。急に止まったのがいけなかったのか、すぐに後ろから誰かがぶつかってくる。その勢いで地面に膝をつけた私が振り返ると、人の良さそうなオジサンが心配そうにこちらを見下ろしていた。
「坊主、大丈夫か? 下着姿のまま家を追い出すなんて、酷い親もいるもんだ」
異世界にも関わらず、話しかけられた言葉が理解できた。英語が大の苦手だった私は、語学を始めなくて良いことにほっとしながらも、なかなか頭が追いつかない。
「いえ、ちがうんです。でも、仕事を探していて」
動揺しすぎて、自分でも何が言いたいのかよく分からない返事になってしまう。
「あぁ、そういうことか。冒険者ギルドはあっちだぞ。城の隣。それにしてもお前、やたら身綺麗だな」
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