瞳に光を

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私が泣けなくなって、何年が経ったのだろう。 毒親、いじめ、盛大な失恋。学生時代に泣いてばかりだったせいで涙が枯れ果てたのか、いつしか泣けなくなってしまったのだ。 味気ないご飯、 空虚な日々、 大切なものが1つも思いつかない人生。 かと言って死ぬ勇気もない。 ただ流れに身を任せ生きている。税金と酸素を空費するだけの存在である事に、時折申し訳なさで潰れそうになる。 その日は仕事で大きなミスをして、かつてないほど死んでしまいたくて悶えていた。 部屋の隅で膝を抱えて蹲った私の視界の端に映る外は土砂降りの雨。 この雨を被って風邪を引いて、あわよくば拗らせて死んでしまえたら。 ふらりと立ち上がり、私は玄関のドアを開ける。ゆっくりと歩き、身体中で雨を吸い込む。着ていたTシャツは身体にぺったり貼りつき、ジーパンの色は濃く変色する。 ふと、踏切が目に入る。 そうだ、風邪を引くまで待たなくても、電車なら、あっという間に。 吸い寄せられるように私は踏切へ向かう。 タタンタタンと警告音を立てて閉まっていく踏切のバーを持ち上げ、中に入ろうとすると、 バサバサッと音を立てて大きなカラスが目の前に降り立つ。 うわっ!と驚き、私は思わずバーを手放し、尻餅をついた。その刹那、電車が高速で目の前を通り過ぎる。 電車が通り過ぎた後の踏切の上には、黒い羽と血と原型を留めない何かがぐちゃぐちゃに乱れ、潰れていた。 しばらく呆然としていた私の雨で冷え切った頬に、熱い何かが伝った。 一度流れたそれは、溢れて止まらない。何故か、何故なのか。 この期に及んで、やっぱり私は死ぬのが怖いのだった。
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