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離さない……
「じゃ、そろそろお風呂入ろうか、雅文」
沢井は喜々として言うと、シーツに黒崎を包んで抱き上げる。
「えっ、待って、和浩さん。今夜はもう、その、エッチなことはダメだよ……」
無駄なことと分かってはいても一応は釘をさしておく。
「何言ってるんだ? 俺はおまえを洗ってやってるだけだろ。雅文の体がやらしいから、そんなふうに感じるだけなんじゃないか」
「和浩さんっ……」
真っ赤になって抗議しても、それは更に沢井を喜ばすだけだった。
じゃれ合いながらバスルームへと向かっているとき、不意に沢井が足をとめて、怖いくらい真剣な表情で言葉を紡いだ。
「愛してるよ、雅文。ずっと一緒にいてくれ」
「……和浩さん……」
やっと止まった涙がまた溢れて来る。
黒崎は沢井にしがみつく手に力を込めた。
和浩さん、俺もあなただけを愛してる。
あなたが俺を守ってくれるように、俺もあなたを守れるようになりたい……。
繋いだ手を決して離さないで、あなたと共に生きていく……。
(了)
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