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屈託
セックスの後は指一本動かすのさえ億劫だ。
黒崎がベッドでぐったりしていると、沢井が暖かなタオルで体を綺麗に拭いてくれる。
「……ありがとう……和浩さん……」
「いいよ。あとでゆっくり風呂に入ろうな」
「……う……」
「なんだよ?」
「なんでもない」
……とは答えたものの、一緒に風呂に入ると必ず一回はセックスすることになるので恥ずかしいし、体力的にも少ししんどいのが本音だ。
それでも、まあ気持ちいいんだけど……。
黒崎が真っ赤になっているうちにも、沢井の手は黒崎の隠された場所へと伸ばされ、中へ放たれた精液を掻き出そうとする。
「あっ……、ま、待って、和浩さん」
「なんで? 入ったままだと気持ち悪いだろ?」
「そんなことない……和浩さんの、まだ外に出してしまいたくない」
言ってしまってから、黒崎は自分はなんて淫らなことを、と真っ赤になった。
しかし沢井の方は黒崎の言葉にすごくうれしそうな表情になり、
「まったくなんて可愛いんだよ、雅文、おまえって。大丈夫……あとでまたたっぷり注いでやるから」
殊更ゆっくりと、加えて妖しげな指の動きで、黒崎の中から自ら放った精液を掻き出した。
黒崎の体力が少し回復するまでお風呂は待つことにして、二人はベッドで寄り添い合った。
沢井の胸に小さな頭を乗せると、大きな手で髪をすくようにして撫でてくれる。
こんなふうにまた和浩さんの腕の中に包まれるなんて、夢みたい。
数時間前までの絶望感が嘘みたいだった。
大切な、本当に大切な人。
俺は和浩さんと一緒に生涯歩いて行きたい……。
改めてそう思うが、黒崎の胸の奥にはまだ屈託が残ってもいて。
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