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幸せ
「泣くなよ、雅文……」
耳元で囁いてからそっと目尻の涙をキスで吸い取ってくれる……いつもの沢井の仕草に、より一層涙が溢れ出す。
沢井は黒崎の涙に何度もキスを繰り返してから、クスッと笑みを漏らした。
「……和浩さん?」
涙声で問うと、いたずらっぽい顔をした沢井が言った。
「源氏ケ丘大学附属病院、外科に『沢井先生』が二人いることになるわけだ」
「……あ」
「これで完璧にバレちゃうな。俺たちの関係」
沢井はとてもうれしそうにしているが、黒崎はとても気恥ずかしい。
沢井の悪友の川上などはあからさまに揶揄ってくるだろう。
その姿が目に見えるようだ。
「まあ、今でもみんな薄々気づいていることだから、はっきりしていいだろ」
「そうだね……」
気恥ずかしいけど……幸せ。
結局黒崎の本音もそこに落ち着くのだ。
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