1.月と花の姉妹

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 彼女からも、耀平の頬にキスをしてくれる。その度に、耀平は彼女の腕の中に崩れ落ちそうになる。  駄目だ。俺は兄貴なのだから、絶対にこの腕の力を抜いてはいけない。この腕で、自分よりずっと小柄な義妹を抱きしめていくのだから。――と、思うのに。  山口に帰ってきた義妹の花南のそんなところが、以前とは大きく異なっている。それまで『最終的にわたしは義兄さんには墜ちない』と我を張ってツンとしていた天の邪鬼が、もうそんなことは忘れたとばかりに、素直に彼女から愛してくれることも多くなった気がする。本当は耀平から、今まで以上に男らしく愛してやろうと思っていたのに、花南が勢いでぶつかってくる。  そんなキスをしてくれた花南の頬に触れ、今度は耀平から、きちんと彼女の唇にキスをする。そっと、義妹が目を閉じた。漆黒のまつげが静かに震えて、耀平の舌先の求愛に小さくうめいてくれる。  ぶつかってきた義妹に気圧されないよう、夜にするような激しいくちづけを長々とすると、花南が苦しそうに顔を背けた。 「もう、ほどいちゃうから」
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