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小さな吐息をついて、また義妹から仕返しをしてくる。本当に耀平が緩めたネクタイをさらに緩めてほどいてしまった。
そうして少しだけ兄貴を脅しているだけだと思っていたら。
「ま、まて。カナ」
義妹の指が、白いワイシャツのボタンをひとつ、ふたつを外し始めた。そこまでならともかく、まだそれを続け、ついにみっつと外した。
いつもカッチリとしたビジネススタイルを崩さない耀平の男の胸元を、花南が露わにして乱してしまう。
「暑いでしょう。まっててね」
さらに耀平はドキリとする。冷茶を煎れてあげると花南がそこに準備していた『氷』をなにげなく手にとって、口に含んで舐めている。
暑いでしょう。まっててね。その向こうになにをされるか、耀平にはもう判ってしまっていた。
氷で冷やした舌先で、耀平の肌を舐めようとしているのだと――。
そんな『おかしなことを急に思いつく義妹の思考』に、耀平は時に翻弄される。
夏の湿気でしっとりとした黒髪、いつも澄ましている媚びない冷たい顔。その顔で耀平を見上げて、氷を舐めている。その舌先が艶めかしい。そう、こういうこと。義妹にはこういう崩した隙がある。男ならここで押し倒したくなる。
「もうお終いだ」
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