1.月と花の姉妹

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 耀平が憎んでいようが、達観して気持ちが丸くなろうが。美月との縁は消せない。航の父親でいると覚悟した以上、母親である美月は耀平が死ぬまで寄り添っていかねばならない『元妻』という欠かせない存在なのだ。  義妹以上の理解を示す女性との運命的な出会いもあったかもしれない。だが、やはり違うと思う。それなら義妹のほうがよっぽど運命的なのかもしれないと、良く思う。  もうすぐ死んだ妻の妹を、当たり前のように(めと)る。  姉妹を愛してしまう男になるだなんて……。耀平だって予想外だった。妻が死んだ後、妹が大人の顔になった。  美月と結婚した頃。花南など、まだ十代の少女だった。  芸大に通い始めたばかりで、幼い顔で、同期生達と騒いで遊んで、大学の課題に追われて……。そんなことは耀平にはとうに過ぎたことで、若い義妹にとっては今がそれであって、その感覚が重なることは決してなかった。だからこそ『義妹のカナちゃん』として、兄貴の顔でおおらかに接するだけの関係でしかなかった。
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