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その時、耀平は……。『兄貴の俺になんの相談もなく』と思ったが、すぐに、『やはり俺は、他人なのだな』と思い至り、彼女を引き止められなかった。
もちろん。なによりも、それは義妹のためだと思った。ガラス職人を真っ直ぐに目指している彼女を引き止めるなどできなかった。
このなにもない豊浦に引き止めてなにをさせる? 彼女の望みと才能を奪って、俺の子育てに協力して欲しいと? 親族であってもそれは言えるはずもない。
やっと小樽駅に到着する。もう日暮れだった。
工房へ向かうのは、明日になる。
翌朝。久しぶりに義妹に会う前に、耀平は小樽工房の親方と密かに面会をすることになっていた。
思った通りの温厚そうな四十代の男性だった。真面目な職人という雰囲気の。
工房はとある観光会社が経営しているとのことで、親方は工房の責任者であって、経営者は札幌にいるとのことだった。
自分と同じ観光系の会社が工房も経営しているということに、耀平は興味を持った。
工房に着くと、まず働いている花南を見せてもらうことになった。
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