1.月と花の姉妹

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 彼女とは、なにかしら合うものが多かった。義妹が最初は合わせてくれているのかと思った。義兄の家だから、住まわせてもらっているから、工房を作ってくれたから――、『義兄でもパトロンだから』、主の趣味を熟知して家を整え待っていてくれるのかと思っていた。  だが五年も暮らすとそうではないと、早い内から感じるようになる。心も身体も、そうセックスも。義妹がなにもかもを犠牲にして差し出してくれているのかもしれないと思っていたが、そうではないことがわかってくる。  訪ねてくるたびに、この家は耀平だけの家ではなくなっていった。そこに義妹の息づかいや薫りが備わるようになった。『ふたりの家』が整っていく。それは妻に死なれ、息子とは血が繋がっていないと酷な真実を知ってしまった耀平には、初めて癒されていく日々だった。  義妹が新しく揃えたものが、耀平にも心地よいもので。また耀平が手にして持ってきたものも、義妹は嬉しそうに飾ったり使ったりしてくれるようになった。  そんな、耀平の居場所で全てだったようなものを、一瞬にして失った――。  
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