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「そうでしたか。いえ、家族になんの相談もなく、いつのまにかこちらに就職を決めておりましたので、家族一同驚かされまして」
そこで、親方が致し方なく笑った。
「このような仕事は、食える食えないで家族に反対されることも良くあることです。どれだけ本人の意志が強いかです」
「……そうですね。義妹を見ていると、まさにそうなのだなと思わされます」
その意志の強さで、義妹は家を出て行った。戻ろうと思ってもすぐには戻れない、こんな遠くまで――。
「彼女が正直に相談していたら。やはりお兄さんは反対されていたのではないですか」
見透かされた気がして、耀平は押し黙ってしまう。温厚に見えても、この男性は耀平よりも男である気がした。
その親方が、耀平に静かに語り始める。
「彼女はいいものをもっていますよ。あの子は職人を続けられる子だなと感じています」
ベテランの職人がそう言ってくれるのだから、確かなのだろう。耀平も感じている。花南のガラスへの姿勢は本物だと。
そんな親方が、応接テーブルの上に数点、ガラス製品を並べた。
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