2.××年 小樽

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「このキャンドルホルダーは、木蓮(マグノリア)をイメージしているようですね。木に咲いている様を思い浮かべてもらう為に、七個大小バラバラに作っています。これを、夜の窓辺に並べて使うと優雅でしょう。暗闇にほんのりと咲いた木蓮のようで幻想的です。こういう贅沢な発想というのでしょうか。幼い頃から、ホテルを経営する家族を見てきたからなのかもしれませんね。使う人間が贅沢に感じるものを、彼女はもうわかっているように感じる時があります」  それまで耀平にとって、花南のガラスはまだまだ学生のアートという感覚だった。どこか生意気で尖っていて、頑張りすぎているというか。  こんな奇抜なもの、誰が使うんだ。奇特なコレクターが並べるにしても、奇抜すぎる。そう思っていた。美月の応援が本当に彼女のためなのか疑問に思うこともあった。  だから、職人としてやるならば、商品の感覚を身につけて欲しいと願っていた。修行するというのならば、学生気分はやめて職人気質になってほしいと。  そんな花南の『ガラス職人としての感性』を、耀平は初めて感じていた。これは化けたな――という驚きでもあった。妻の美月は、これに気がついていた?
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