16.金春色の、お日柄に

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 それでも、副社長である義兄が、慕われていることは知っていたつもりでも、このように目に出来るのはなかなかないことだから、カナには新鮮だった。 「素敵な花嫁さんになりましたよ。副社長」  藤井さんに言われ、義兄がじっと鏡に映るカナを見つめている。  耀平兄さんも、今日は新郎としてばっちり決めていた。濃紺のフロックコートに、ライトグレーのベスト、そして綺麗なブルーのアスコットタイにダイヤのピンを付けている。  もう髭も生やさなくなった爽やかな顔立ちに、長めに伸びていた前髪をバックにセットして。今日はいつも以上に、大人の男の色香を漂わせてカナの側にいる。  その義兄が、ふっと鏡に映るカナに微笑みかけた。  ――忘れかけていたような、つきんと胸をつつく『ときめき』。  鏡の中で、彼とずっと見つめ合う。彼もそんなカナの眼差しに気がついたようだった。 「藤井さん、ありがとう。カナと二人にしてくれますか」 「はい。お嬢様、お疲れ様でした。では、また後ほど」 「今日も素敵にしてくださって、有り難うございます。藤井さん」  スタイリストの彼女が微笑み、プライベートルームを出て行く。
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