16.金春色の、お日柄に

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「それに甘えてばかりもいられないだろう。どんなに海辺の教会でと思ってくれても、会場が古くさいままだと最新の式場に勝てないことも多くなる」  そうして、義兄が従業員と創り上げた『倉重リゾートブライダル』は、いまでも衰えない人気で予約がいっぱいになっているとのことだった。  カナは花嫁プライベートルームの窓辺へと歩く。大きな窓と、ヨーロピアン風の白いテラス。その向こうにまるで外国のようなアクアマリンの海。 「ほんとうに素敵なお部屋を花嫁さんの為につくってくれたのね。きっとお客様も素敵な想い出になると思う。この海のこと、ずっと覚えていてくれるよね」  そんなカナの側に、正装姿の義兄が寄り添ってきた。 「まさかな。カナとここを使うとは思っていなかったけれどな」  義兄がそっと着物姿のカナを抱き寄せる。カナも素直に、彼の胸に頬を寄せた。 「ん? おかしいな。なんか、カナが素直だな」  カナは黙った。そのとおりで、今日はやっぱり嬉しい。そして、大好きな金春の海があるここで彼と一緒になれるのが嬉しい。 「義兄さんの笑った顔。あの日と一緒だね」
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