16.金春色の、お日柄に

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「嬉しいの……。義兄さんがまた、なにもかもを信じていたあの日と同じように。いまもなにもかもを信じて、笑っているの。耀平兄さん……。お兄さん、元に戻れたんだね。わたしが大好きだった笑顔に戻ってくれたんだね。わたし、これからもずうっとその笑顔にきっとドキドキしていけるから」  彼がなんとも言えない顔で、カナを上から凝視している。心なしか、黒い目が潤んでいるように見えてしまう。 「カナ……!」  フロックコート姿の彼に、着物姿のカナは抱きしめられる。 「花南。おまえが戻してくれたんだろう。おまえが、俺なんかをずっと想ってくれたから」  そう言われると……。カナも泣きたくなってくる。好きすぎて、彼から離れたり。彼を想いすぎて、嘘をいっぱいついて、結局最後に傷つけてしまったり……。ひとりでいることで、彼を愛してきた時もあったから。 「花南。もうおまえをひとりにするようなことは絶対にしない。だからおまえも、俺のためにひとりになろうとか二度としないでくれ」  強く抱いてくれている彼の息が熱く、カナの耳元をくすぐる。そんな彼を、カナも重い袖の腕でいっぱいに抱きしめる。
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