16.金春色の、お日柄に

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「うん。ずっと耀平さんといるから……。ずっとずっと前から、愛しているのはお兄さん一人だったって、これで信じてくれる?」  やだ。涙……、出てきちゃった。 「そんな前から俺のことを想っていてくれたなんて……、知らなかったんだ。もう俺は、そんなカナには絶対に勝てない」  そんなことないよ。だって、わたし。  抱きしめて耳元で囁いていた彼が、そっと離れ、またカナを上から見下ろしてくれる。でも、彼がそこでカナの顔を見て驚いた顔。 「なんだ。カナ……。おまえ、」  彼がジャケットのポケットから、白いハンカチを取りだす。そしてカナの頬と目元にそっと当ててくれた。涙を拭くために。 「わたしだって、義兄さんに勝てないよ。天の邪鬼が、結婚式で素直に涙を流すなんて……。ダメでしょ。やっぱり結婚式なんてするんじゃなかった」  天の邪鬼。お兄さんの妻になれたなら、他にはなにもいらない。指輪もお式もいらない。そう思っていたのに、やっぱり今日はきちんと改めるお披露目をして良かった。  お式をすることで、彼の笑顔がみられたから。  自分をいつまでも抱きしめてくれる耀平の頬にそっと触れる。
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