16.金春色の、お日柄に

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「そうだ。航が俺の子供ではなかったと知って、美月がどこの男と関係を持ったのか見当もつかなくて。夫であった俺のすべてを拒否して飛び出して、突然いなくなって。話し合うことさえも二度とできなくしてしまった。信じていたなにもかもが崩れきった。怒りと憎悪が毎日まとわりついて、俺は恐ろしい顔つきになっていた。航にそんな顔だと知られたくなくて、それなら怖い顔風にしてしまえば、言い訳も出来ると思ってあの顔にしていた」 「……もう、しなくて良くなったんだよね」 「ああ、カナが帰ってきたから。俺のものになって、航の母親になってくれる。俺と一緒に倉重の家を守ってくれると言ってくれた。そして、美月のことも……。いったいなにが起きていて、俺はなにが出来なかったのか、それも良くわかった」  今度は耀平が、男の大きな手でカナの頬をつつんでくれる。 「もう、終わったんだ。俺と美月は。俺はもう、おまえの姉を憎んでいない。この倉重で、花南と生きていく」  そう言って、義兄は両手の中にいるカナへとそっと顔を付けづけてきて、赤く染まったくちびるへと柔らかにキスを落としてくれる。  カナからもそっと、彼の唇へとキスを返す。
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