16.金春色の、お日柄に

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「わたしも、この海があるホテルを守っていく。お兄さんが守るもの、一緒に守っていくね。倉重も、ホテルも、ガラス工房も。そして、航も」  この海が好き。金春色の海は、わたしの生の根底に鮮やかに湛えて、さざ波が絶えない。  今日も目の前には、金春色の海。艶やかな京友禅の黒引き振袖を着付けたカナは、夫になる彼の腕に抱かれながら、その海を見つめる。  黒髪には、彼が選んでくれた大好きな花が咲いている。その花にも、彼がそっとキスをしたのが伝わってくる。    七つのマグノリアに火をつけて。  わたしの心に、たくさんの花が咲く。  夫が贈ってくれた大輪の芍薬。  わたしが夫に贈った白いマグノリア。  どれもわたし。 「義理の兄と妹でしたが、遺された航と二人、どうして良いか戸惑った時も、花南がそばにいてくれました。花南と航と共に生きてきます。改めて、倉重の人間として花南と支えていこうと思っております」  挨拶をする新郎である義兄の隣に並び、黒引き振袖姿の花南も、彼に合わせてそっとお辞儀をする。  食事会のテーブルに並ぶ親族から『おめでとう』の声がいくつも届いた。
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