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「そうなんだ。実はちょっとだけ、小樽のガラスを取り寄せてね。それがとても良かったので、直に見てみたくなった」
だけど、花南がちょっとふてくされた顔になる。
「まさか。わたしがいる工房のものを取り寄せたの?」
「さあ、どうだろう。でも俺は、良い品しか買わない。それはカナちゃんも知っているだろう」
「じゃあ。うちの工房の、親方や先輩の作品を見ていって。どれも素敵だから」
花南も胸を張れる工房を選んだのが伝わってくるし、それは親方と面会しても、一年修行をした花南の作品を見ても正解だったと思う。
花南からも親方の工房を薦めてくれて、もう白状してしまおう、カナちゃんの作品を見たよ……と告げようとした時だった。
アパートの階段から、誰かが駆け上がってくる忙しい足音が聞こえてくる。
花南の部屋の前で向き合っているところに、同じような黒いスーツ姿の男が現れた。しかももの凄い形相で、花南ではなく耀平を睨んでいる。
「おまえか!」
花南を押しのけ、いきなり耀平に掴みかかってきた。
ものすごい力で、義妹の部屋のドアへとガンと頭を叩きつけられた。
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