2.××年 小樽

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 痛さで目をつむってしまい、反撃ができなかった。それをいいことに、男が耀平の首を締め上げ、もの凄い形相で食らいついてくる。 「花南の新しい男はおまえか!」  花南の、新しい男? 息苦しい中、耀平はうっすらと目を開けた。  生真面目そうな身なりの良い青年が、歯を食いしばるほどの力を込めて顔を歪めている。 「ち、ちがう、お、俺は……」  締め上げられている男の腕を、耀平も掴んで離そうとした。 「やめて!」  花南が青年の背中に抱きついて、耀平から引き離そうと必死になっていた。 「こいつか、こいつと付き合い始めたから、俺を捨てたのか」  男が耀平を指さした。そして耀平も状況を判断した。この青年、花南とつきあっていた男なのか――と。 「その人は、実家の兄」  花南の言葉に、青年が驚いて耀平を見た。 「嘘だ。花南には、死んだ姉さんしかいなかったはずだ」 「その姉さんの夫。だから、わたしの義理のお兄さん」  またその青年の、耀平を見る目の色が変わった。 「じゃあ、他人じゃないか! 姉さんがいなくなったなら、なおさらだ。どうして花南に会いに来ているんだ。この男が来るから、俺と別れたのか!」
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