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いつも静かな表情をしている花南が、こんな時に怒りを露わに険しくなる。
「他人じゃない! わたしの大事な家族なんだから、変なことは言わないで」
耀平の前に立ちはだかり、花南は男をはね除けた。
他人じゃない。大事な家族……。そんなことは言ってくれたこともない義妹の言葉に、耀平は思わず感動してしまった……。
その男の様子に構わずに、花南が耀平の手を握った。
「兄さん、ごめんなさい。こっちに来て」
玄関を鍵で開けると、花南は耀平をひっぱり急いで部屋へと入ってしまう。しかもまだ諦めない青年の様子に構わずに、ドアをバタンと閉めてしまった。
花南、花南。開けろ! まだ話は終わっていない!
ドンドンとドアを叩いている。正直、耀平は青ざめていた。久しぶりに会う妹に男がいて、その男が妹につきまとっているこのいきなりの状況に。
「カナちゃん。どうしてこんなことになっているんだ」
「気にしないで。そのうちにいなくなるから」
「そのうちに? いつもこんななのか」
そして花南はさらっと言い放った。
「うん。別れて一ヶ月経つけど、時々こうして来て困っている」
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