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小樽の街に溶け込むように、義妹の住まうアパートも静かになる。耀平はドアを開け、花南がいる部屋に戻った。
「帰ったよ、カナちゃん」
だが、耀平と彼の交渉を聞いていた花南は不機嫌な顔をしている。
「仕方がないだろう。向こうが納得していないのだから『別れ話』は仕切直しだ」
「……たった二ヶ月付き合っただけで、結婚してくれと迫られているのに?」
はあ? 耀平は目を丸くした。
たった二ヶ月で義妹にべた惚れ? 確かに、花南は色香も出てきて大人になっているが、だからとてちょっと付き合って骨抜きにするような強者女でもない。
「そんな思いこみが強い男は駄目だ」
「わかってる。だから、結婚はできないって断ったの。でも、俺と結婚したら、ガラスを辞めさせてあげる、楽をさせてあげるからって……」
花南にガラスを辞めて――と言ったのか。『これはますます駄目だ』と耀平は首を振った。
「まったくカナちゃんのことを理解していないじゃないか。彼女が一生懸命やっているガラスを辞めさせて楽をさせてあげるとは、どうしてそう論点がずれたんだ」
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