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「だから別れることにしたの。優雅な奥さんになれば、ガラスのことはどうでもよくなる。みたいに言うの。全然、話が通じないから『違う人を好きになった。もう会いに来ないで』と言ったらあんなことになって」
「それで、俺のことを新しい男と思ったのか」
花南が申し訳なさそうに頷いた。
「まさか。お兄さんが来てるだなんて……。ごめんなさい。びっくりしたでしょう」
「いや……。来て良かった。お父さんもお母さんも、なにも言わないけれど、カナちゃんのことをとても心配している。だから来て良かった」
花南が顔が見えなくなるぐらいに俯いた。そんな時だけ、一緒に暮らしていた頃の『まだまだ若い妹』の顔になる。ちょっとだけ泣いているのが、耀平にはわかった。
なんでそんなにひとりで頑張っているのだろうと、ふと思った。
「困ったことがあるなら、どうしてお母さんだけにでも相談しなかったんだ」
「お母さんには、航の側にいて欲しいから。これ以上、航に寂しい思いさせたらいけないよ……。だから兄さんも早く帰って。お父さんがいなくても、航は寂しがるでしょう。わたしのことは自分でなんとかするから」
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