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耀平の胸を貫くものがあった。この義妹は、息子の航のことを遠い小樽にいても思ってくれていた。やはり、二年、一緒に暮らして手伝ってくれただけあった。
「じゃあ。これからは、兄さんに相談してくれないか」
花南は黙っていた。兄さんに相談も、躊躇うようだった。そういう頑ななところがあるのもわかっている。
「わかったよ。カナちゃん。だけど、俺やお母さん、お父さんも、ちゃんと助けてくれることは絶対に忘れないでほしい」
久しぶりに、花南の黒髪の頭をそっと撫でた。花南がやっと耀平の顔を見上げる。
あどけなさが残っていたけれど、本当にもう、大人の顔だった。
「せっかくだから、帰るまでにカナちゃんに小樽でも案内してもらうか。ガラスの店がいっぱいあったな。あと、今夜は兄さんと食事でもしよう。うまいレストラン知っているか」
切り替えの早い義兄を知って、やっと花南も実家で見せていたあどけない笑顔を浮かべた。
「小樽に来たらレストランより先に、お寿司屋さんだよ」
「いいな。北国の魚介で寿司か」
「ワインとお寿司で食べるところもあるよ」
うんいいな。と、耀平もようやっと兄貴の顔で笑えた。
その夜は小樽の寿司を二人で食べて、花南とは別れた。
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