3.△△年 小樽

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 だが、釈然としない何かが耀平の中に残っていた。  あの義妹が、家を出て一年もしない内に男とつきあっていただなんて……。正直、ショックだった。  男に身体を明け渡したことも、好きにされたことも。  その快楽に若さで堕ちて溺れた義妹を想像すると、居たたまれない気持ちにもなるし……。おかしな気分になる。  だが、花南はまだ二十四歳。一人でこの北国に来て一年。そろそろ独り身が侘びしくなる頃かもしれなかったし、若くても女、人肌が恋しかったのかもしれない。  もともと義妹には『ヒロ』という恋人が学生の時にいて、耀平も顔見知りだった。だけれど卒業前にはもう二人は破局していた。以降、義妹に特定の男はいなかった。  なのに。時々ふらっと夜の街に出て行っては、そんな女の雰囲気で帰ってきたことが一、二回あった。その時、倉重の家で花南と一緒に暮らしていた義兄にはわかってしまう。『適当な男と寝たんだな』――と。
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