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翌日。小樽二日目。
さて。今夜は、あの青年とどう話して諦めてもらおう。
朝から耀平はそう考え始めていた。うまく別れてもらう言葉を探して並べている。
なのに、工房の親方から思わぬ連絡がくる。
『二度と息子には会わないで欲しいというご両親が、妹さんには会いたくない、ちょうど来ているお兄さんに会わせて欲しいと私のところに来ていまして……』
はあ? あのお坊ちゃんの両親か。しかも、どうして花南の上司に会いに来た? 筋が違うだろう。
『二度と会うなといいたいのはこっちだ』と、息巻いて耀平は工房事務所に向かった。
―◆・◆・◆・◆・◆―
行く途中、歩けば歩くほど怒りが渦巻いた。
いったいどういう両親だ。息子のプライベート問題を、相手の花南本人ではなく、花南が困るように職場の上司にクレームを言いに来るだなんてとんでもない親だ。
普通は本人に言う、それで収まらないなら家族が筋。それを、相手の女が困るように『職場の上司にクレーム』とはなんという!
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