3.△△年 小樽

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 事務所の入り口で親方が落ち着きなく待っていた。すぐ隣が工房なので、耀平も花南に気がつかれないよう、親方の案内でさっと事務所に入る。  親方のデスクがある事務所に、その人たちが既に待ち構えていた。  小さな応接テーブルにあるソファーに、身なりの良い初老の夫妻が座っている。 「こちらが倉重のお兄さんです」 「倉重花南の兄です。妹がなにかご迷惑でもおかけしましたか」  耀平が相手の女の『兄』知って、あちらの父親は丁寧に頭を下げてくれたが、母親には睨まれた。  それで耀平も察した。息子が可愛すぎる溺愛ママかと。  夫妻の向かい側に、親方と一緒に並んで座る。 「息子がそちらのお嬢様と結婚したいと言い張って困っております」  知るか。花南はそちら様のご子息なんか、もう眼中にはない――と、胸の奥で毒づいた。 「今夜、そちらのお嬢様とお兄様とお会いになる約束をしてきたと息子が言っておりまして。その際に妹さんとお兄様と会って、きちんと話をまとめてくる。きっと彼女にうんと言わせると喜んでおりましてね。お兄様が結婚を勧めたりしたら、妹さんも本気になってしまうかもしれないでしょう」
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