3.△△年 小樽

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 弁護士と弁護士をぶつけあって、そうすれば、どちらが勝つのか。どんな不利が生まれるのか。自分たちが力無き娘にやろうとした力業に返り討ちにあい、今度は母親が青ざめている。 「ただ今夜、最後に一度だけ。彼と妹にケジメをつけさせてください。それが終わりましたら、妹と彼を二度と会わせません」  最後に耀平に答えてくれたのは、おろおろとしていた父親だった。 「承知いたしました。息子がご迷惑をおかけしました。息子は真面目にやってきたので、おそらく女性と付き合うのが初めてだったと思います。初めての女性が妹さんで、とても素敵な思いをしたのでしょう。妹さんは、恋や結婚よりも、職人としての目標がある女性。息子の生き方には合わない女性だと言い聞かせます。ほんとうに失礼なことをいたしました。妻と息子の不始末、そして至らない父親であった私のこともお許しください」  なんだ、親父さんは至極まともじゃないか。もうちょっとしっかりして欲しい……と、思いながらも。でもこの言いだしたら聞きわけなさそうなお母さんを好きにさせて、最後はお父さんが尻ぬぐいをしてなんとかやってきたのだろうな――と思わせる光景だった。
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