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あの青年が、そうして花南の肌に夢中になって貪った日々がある。短くても、とても濃厚だったのだろう。また、彼の家柄になびかなかったのも、彼には良かったのかもしれない。質素でも家柄に左右されない花南が、ありのままの彼を受け入れたのなら、家に縛られている自分を受け入れてくれると感じさせたのかもしれない。
それでも。耀平の中に嫌なものが渦巻く。
「来ないね」
最後の話し合いをしようと、花南が久しぶりに青年に連絡をした。その待ち合わせ場所のカフェで待っている。
花南を窓際の席にひとりで待たせ、同席をすると言っても、耀平は二人きりにさせるため、離れた席に座っている。
でも。結局……。青年は約束の時間が過ぎても現れない。あんなに会いたい、話したい、俺と結婚して欲しいと思っていただろうに。
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