3.△△年 小樽

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「……怒ってるよね。お兄さん」  不機嫌さが妹には露骨に伝わっているのは、耀平もわかっている。 「ああ、怒っている。向こうがしつこく会いに来ていたのに、最後の約束を破るとはなんだ」 「彼じゃなくて、わたしのこと」  誤魔化しても無駄だった。それなら……。 「うん。カナちゃんのことも怒っている。すぐに男に気を許すのはやめて欲しい。今回だけではないだろう。その気もないのに、気を許したのは……」  それまで実家でも、適当な男と寝ただろう事も暗に含めて釘を刺す。 「はい……。ごめんなさい……。でも彼は優しかったし、最初は大人だったから……」  その義妹が、小さく呟いた。『お兄さんみたいだったから』と。  あんな男と俺を一緒にするなと言いたかった。でもそれが耀平兄さんみたいだったから、と言ったわけでなく、ただ年上の男がお兄さんみたいだったからとも取れる。 「花南の本当の兄貴は、俺だけだ。他のお兄さんは、お兄さんに見えて男だ。気をつけるように。わかったな」 「はい、耀平兄さん」  だいぶ懲りたようなので、耀平も口うるさい兄貴にはなりたくなくて、もうそれでお終いにした。
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