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航は花南を慕っている。航の為だけじゃない。俺が、もう一度、花南と息子と暮らしたい。
この家に、他の血は入れない。決して……。航のものだ。
小樽 大沢ガラス工房 遠藤親方
倉重でガラス工房を立ち上げることになりました。
花南をそこで活動させようと思います。
一年後、引き取りに行きます。花南にはまだ伏せておいてください。
それまでに、製品の技巧を叩き込んでやってください。
最初は渋っていた親方を、なんとか説得することができた。
△△年 小樽――。
雪が降る小樽にいた。
黒いコートに小雪がまとう。凍てつく空気が、さらに耀平の決意の矛先を鋭く研ぐ。
妻に裏切られ、妻と決裂し、彼女は死んでしまった。
遺された息子の父親が誰か判らず、自分の血の繋がった子供ではなかったことが、愛おしいから余計に口惜しい。
ささくれた気持ちを蓄えすぎて、少しばかり痩せてしまった。痩けた顔のイメージを変えるため、髭を残すスタイルに変えた。
きっと義妹は、こんな様変わりをした義兄を見て驚くだろう。
真っ白な街の片隅にあるガラス工房で、久しぶりに花南に会う。
「帰るぞ、カナ。山口でガラスを造るんだ」
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