4.○○年 山口

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 どんな抗議にも耀平は答えなかった。耀平の目は間違っていない。義妹は、決して俺を嫌っているわけじゃない。  根拠のない確信のようなものが、ずっと前からあった。『決して、嫌われてなどいない。カナだって俺のこと……』。そんな素振りが彼女にも何度かあった。彼女に少し『ときめいている?』と感じた頃。それを悟られたかのように、花南は小樽へと行ってしまった。  なのに花南はそれを忘れたようにして、切り捨てたようにして、小樽で男に身体を明け渡していた。どうでもいい男に。いまなら言える。あれは初めての嫉妬だった。  全てを従えた耀平は、素肌になった義妹を見下ろす。 「カナ。そんなに嫌か」 「嫌――」  そういいながら、彼女はもう抵抗してこなくなった。 「俺は……すごく、気に入った」  泣いている義妹の顔を包みこんで、今度は優しくキスをして唇を吸った。また可愛い声を『あ』と漏らし、ついに花南の身体から力がぬけていった。  男はあれきり。花南は独り身を貫いて、ガラスに没頭していた。もう、あの時から俺のものだった。そう思いながら、やっと手元に置いた義妹を愛しぬく。
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