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やっと義妹から『妻』になる。
妻の美月が逝ってしまって、十三年。
もう、いいだろう。姉の次に迎えた妻が、妹でも。
誰がなんと言おうとも、もう揺るがない。
山口の家に来た日は、山口周辺の仕事を入れるようにしている。
またこの付近にあるグループの事業を見回るようにしていた。
契約先との会議や、打ち合わせ。観光協会の会合。わりと忙しい。山口の家と豊浦の本家を行き来するのが大変なように思えて、山口で休める家があるのは実は良い中継地点でもあって、あちこち営業に廻る副社長にはいい拠点にもなっていた。
「今日は銀行の担当者と会って、その後、湯田の料亭旅館支配人と秋の懐石フェアのミーティングで……」
花南に予定を告げる。そして、夜はまたここに帰ってくると教える。
「うん、わかったよ。今夜はなにが食べたい?」
「うーん、そうだなあ」
花南が『これが九月のネクタイよ』と並べてくれたものから、ひとつ、手にとってワイシャツの衿に通す。
義妹が作るお気に入りのものを思い浮かべていたら、あまりにも迷いすぎたのか、ネクタイを結び終わってしまった。
花南も一生懸命、考えている。
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