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それでも義妹が真顔になって、耀平の唇を執拗に撫でる。口を開けて噛めと急かしている。
仕方がないから。そっと口を開け、耀平は柔らかく花南の指先を噛んだ。
「吸って……」
いや、だから。もうこんなことは。
「吸って」
黒い瞳の眼差しに負け、耀平はそっと噛んだままの指の腹を小さく舐めた。
「黒い蝶。花にとまって蜜を吸うでしょう。男はそうだよね」
「男、をガラスに」
それは俺のことか、と聞きたくなったけれど。いや、聞かないでおこうと思い止まった。もしそうなら、どう造られるのか気になってしまう。自分を自分で見定めることになりそうで恐ろしかった。
「そこらじゅうにいるでしょう。蜜を探している蝶々」
確かに。男が蝶なら、地球は覆い尽くされているに違いない。
花南が耀平の義妹でも女でもなくなる時。今日の花南はそんな日。もう昨夜から始まっている。そして火の前で、俺が愛撫した跡を流しきってしまう。削ぎ落として、純真な核をガラスにする。
「楽しみだ。花南」
噛んだ指先に、耀平はキスをした。すぐに義妹の顔に戻って、花南は微笑んでくれる。
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