5.私が父親です

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 開け放たれたリビングの扉の向こうで、ヒロと舞も不安そうに眺めている。  母親が息子の死に疑問を持つのは当然のこと。花南が警察で取り調べを受け、釈放されるその時に『証言をした者』としてのサインをした。だがそれは花南ではなく、耀平がした。  刑事に無理を言って頼んだ。義妹の証言は、倉重の家に関わること。家のことは義父か自分が取り仕切っているから、養子である自分が責任を持つ――ということで、耀平がサインをした。ただし、花南が証言した内容は『個人情報』であり、開示はしないで欲しいと頼んだ。  そもそも日本の警察は、諸外国と異なり、遺族に捜査の情報をすべて開示することはないともいわれている。  目撃者や証人の個人情報を守るためとも言われている。それが遺族にはとても理不尽なことであって、証言をした者としては、協力をしたが恐ろしいという不安から守ってもらっているという奇妙なものになっている。  証言をした当事者として、助けられた部分はある。それでも耀平は、遺族には不憫だとは思っていた。
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