1.月と花の姉妹

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「そろそろ切り揃えておけよ。おまえを紹介しなくてはならないのだから」  義妹がため息をついた。もうすぐ招待されたパーティーがある。そこで耀平は『婚約者』として花南を同伴させるつもりだった。それは義両親にも勧められていることで、早い内に人に知っておいてもらったほうがいいという方針で、花南は親の言うことともあって承諾してくれていたが……。 「面倒くさいな。わたし、お姉さんと違って、人とお喋りするのは好きじゃないし、愛想良くできないから」 「そんなことは誰もが知っている。いつもの花南のままでいい。ガラス職人のおまえに会いたいんだろう。職人堅気な顔の方がそれらしくて喜ばれるだろう」 「そうなの?」 「そういうイメージで期待している人間が多いだろうと思う」 「良くわからないな。そういう感覚……」  社交界は、イメージが先行することが多い。そこに乗るか乗らぬかは、やはり『見る目』が必要となる。  亡くなった妻はそれがあった。そんな意味では、妻との会話は弾み、そして考え方が合っていた。だから妻も言っていた。『私と耀平さんならうまくやれるわよ』と――。
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