11.いつまでもお兄さん

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 ――黒い蝶。花にとまって蜜を吸うでしょう。男はそうだよね。  その通りに。耀平は花南という花が自ら見せた『隙』へと唇を寄せる。そこに滴る蜜を吸うのが男の仕事。    翌朝。裸で目覚めた花南が気怠そうに黒髪をかき上げ、隣にいる耀平を見て言った。 「おはよう。お兄さん」  いつもの花南の顔。アンニュイな横顔、でも甘い声の挨拶。だが……。  耀平も裸のまま起きあがり、しかめ面で乱れた黒髪の花南を見下ろした。 「おまえ。ゆうべ、俺の妻になったんだよな」 「あ。えっと、よ、耀平、さん? え、なんか変!」 「もういい。兄さんのままで。俺も変な気分だ」  駄目だ。気持ちは妻でも、きっとこれからもずっとお兄さんなんだ。  そして耀平も首をひねる。花南に『耀平さん』と呼ばれても、嬉しくないなあ、どうしてなんだ――、なんて。
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