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少し早めに出て、空港行きの直通に乗った。
土曜日なので、いつもよりは空いている車内。
イヤホンでWINの曲を聴きながらテンション上げ気味で、ソウルの観光ナビを検索していると、どこかの停車駅で誰かが近づいてくる気配を感じた。
「……おはよう、衣咲。」
「あ……おはよう。直紀さんもこの電車だったの?」
「うん。乗り換えなくて済むから、楽だと思って。」
実は今回の旅行、亮太くんの他に巻き込まれた人物がもうひとり。
それが、目の前にいる彼。
逢沢さんを含め、旅行メンバーがいよいよカオスになり始めたので、通訳にもなるからと白羽の矢が立ったのだ。
知らされたのは、3日くらい前だったけど。
絢音さんと直紀さんは仲の良い友人同士だし、私と直紀さんの関係も良好だし、亮太くんは誰とでもすぐ打ち解けられるし、と考えたら拒む理由は全くなかった。
喜志と逢沢さんは、別行動だろうし。
「衣咲、荷物多くない?」
「これね、空っぽなの。大きめの方がいいって、絢音さんが……」
「買い付けにでも行くの?」
そう指摘されるのも無理はない。
リュックひとつでやって来た直紀さんからすれば、このキャリーケースは大荷物に見えたのだろう。
行商人スタイル、ここに見参!
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