ソウルの夜

6/51
前へ
/308ページ
次へ
. そんな私の心配をよそに、喜志たちが私たちと合流したのは、搭乗の案内が始まる頃。 私たちの姿を見つけると、手を振りながら近づいてくる。 その後ろには、メデューサ逢沢の姿。 目のやり場に困るくらいのミニスカートからは、細くて綺麗な生足。 いや……この時期のソウル、なめちゃいかんぜよ。 夜は寒いぜよ、なんて。 思わず、龍馬さんが登場しちゃったよ。 「あー、来たね。ギリギリじゃん。」 「俺は時間を無駄にしない男ですから。」 「ほう。その言葉、仕事中に聞いてみたいもんだよ。ねえ、衣咲ちゃん。」 絢音さんが、自然に会話を振ってくれる。 話しかけるタイミングを見計らっていたから、とても助かった。 喜志が、いつもの笑顔で「おはよう」と言ってくる。 「……来ないかと思ったよ。」 「そんなわけないだろ。海外旅行のドタキャンは、流石に人として有り得ない。」 「だって喜志だし。」 「朝から失礼極まりないな、お前は。」 可愛くなれないのは毎度のこと。 でも、これが私らしい接し方だから、無理する必要なんてないのかもしれない。 今日は、余計にそう思う……。 喜志の隣で、敵意に満ちた目をした彼女のせいで。 .
/308ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3200人が本棚に入れています
本棚に追加