同期のアイツ

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. 世間一般では、いつもと変わらない金曜日の週末。 でも私は、今朝から気持ちが落ち着かない。 「七倉さん、この集計データなんですが。」 「それなら、このフォルダの中から、去年の分を選んで……」 後輩からの質問に応えつつ、もう何度も時計ばかりを気にしている。 あと1分……。 30秒、29秒、28秒……。 寸分の狂いもないと言い切れない壁時計の秒針が、カチカチと進むごとに心臓が高鳴る。 そう、これはまるで、『あの瞬間』のような……。 「ごめん、ちょっとお手洗いへ……席を外します。」 15時をちょうど回ったところ。 タイミングを見計らって、席を外す。 足早に部屋を出て、いちばん近くにある化粧室に駆け込み、個室に入る。 そして、ポケットに忍ばせておいたスマホを取り出した。 あ、メールが1件。 いつもは時間より少し遅れて来るのに……。 これは、もしかして……。 緊張で手が震える。 大きく深呼吸をして、指先に祈りを込めながら画面を開いた。 ――― 厳正なる抽選を行った結果、お客様は当選されました。 当選。 その二文字を見た瞬間、足元から崩れ落ちそうになる。 やったぁぁぁ……WINのカウコン!! 3年越しの夢、やっとが叶った!!  この日の為に毎朝、出勤の前に家の近くの神社へ立ち寄って祈願をしていた。 休みの日には絵馬を書き、ありとあらゆる神頼みをした。 多分、周囲の人には、信仰深い謎の人物に見えたに違いない。 ・
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