かぐや姫~in歌舞伎町~

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歌舞伎町で働くNo.1ホステスのかぐや姫。周りには、自分はおじいさんに竹の中から見つけられたと言っているが、もちろん事実ではない。彼女は家族と騒動を起こして家出をし、歌舞伎町をぶらついていたところをおじいさんに声をかけられた。かぐや姫はおじいさんの経営しているクラブMoonで働くことになり、わずか18歳でNo.1ホステスまで昇りつめたのである。  ある日、クラブMoonに一人の男が現れた。男の名は帝。有名な貿易会社で働いているエリートである。帝は一目でかぐや姫に惚れて、何度も結婚を申し込んだ。かぐや姫は断り続けたが、帝の真剣な眼差しに、かぐや姫の心も動かされていった。とうとう意を決したかぐや姫は、申し込みを受けに帝のマンションを訪れた。ロビーでインターホンを押すと、出たのは女の声だった。 「はい。」 「あの、帝さんは…」 「あぁ、今ちょっと出てるけど。」 「そうですか。」 「あんたって歌舞伎町でNo.1ホステスやってるかぐや姫でしょ。」 「どうしてそれを…」 「帝のことは何でも知っているから。」 「そうですか。失礼しました。」  雨の中走り出すかぐや姫。彼女の頬を伝うものが、雨なのか涙なのか、それはかぐや姫自身にしか分からない。  次の日、クラブMoonに息を切らせながら帝が入ってきた。 「帝さん…」 「昨日、マンションに来てくれたんだって?」 「そのことならもういいの。帝さんにはちゃんとした人がいるじゃない。」 「何のことだ?」 「とぼけないで!昨日、女の人が出たんだから!」 「違う!誤解だ。」 「何が違うのよ。」 「あれは姉さんなんだ!」 「何でお姉さんがあんな時間にいるのよ。」 「上京してきたばかりだから泊まってるんだよ。とにかく違うんだ!」 「もう遅いわ。私、3日後には日本を離れるの。」 「どういうことだ。」 「アメリカで暮らすことにしたの。さようなら、帝さん。」  3日後、帝の姿を見ることなく、かぐや姫は日本を発った。
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