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母にも言われたことがある言葉を言われ、優太は項垂れた。そんな優太を見ながら、黒曜は「まったく」と腕を組み、ため息混じりに言った。
「あの狐が最後に言ってたことがやっと理解出来たにゃ」
「狐? 九条さんに何か言われたんですか?」
「あんたがオオヤとか言う人に電話してる時に言われたにゃ。『ユタくんは仕事は真面目できっちりやる子だけど、私生活は適当すぎるからきちんと見てやって欲しい』ってにゃ」
「えっ」
言われてみれば、優太が電話をしている最中、九条と黒曜がカウンターの中で何やら話をしていた。
──まさかそんなことを話してたなんて・・・・・・。
「かっこ悪・・・・・・」
「言われた時は面倒くさ、って思ったけど・・・・・・これは、やらにゃかったら私まで被害を被るレベルにゃ・・・・・・」
「す、すみません・・・・・・」
そう言いながらコートを脱ぎ、渡されたハンガーに袖が入ったままのコートを適当に掛けた優太を見て「もういいにゃ。片付けは私がやるにゃ」と黒曜は呆れながらも言った。
「そう? 料理は俺がやるから」
「・・・・・・大丈夫にゃんだろうにゃ?」
「一応Barで働いてる身だし、勉強もしてるし、大丈夫だよ」
「ほんとにか? 嘘だったら容赦しにゃいにゃ」
そう、疑心暗鬼になる黒曜に優太が特製の鮭ムニエルを作って食べさせたところ、黒曜はいたく気に入り、料理は優太が担当することで話は収まった。
こうして、色々ありつつも優太と黒曜の生活は始まった。
「靴下を裏返しに脱いで放置するにゃ!!」という声とともに。
case:1 猫又 終
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