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電気を消した部屋で、テレビだけが明かりを灯している。
次の番組が始まり、今度は楽しそうな笑い声が部屋に響き渡っている。
数分前まで絶望感に浸りきっていたわたしの頭は、ガンガン脈打っていて涙が止まらないまま、楽しそうな笑い声についていけていない。
なんで笑っているの。
笑って欲しいのはあの人なのに。
あの人に笑って欲しかった。
来るはずだった未来のように。
テレビ明かりが反射しているテーブルの上で、グラスの中の氷が、茶色い液体の中で自らが溶けるのを待っている。
その様子を見たくて、グラスを顔の前まで持ち上げ、くるくる傾けながら液体の中でゆるく滑る氷を眺めていると、どうしても、どうしてもさっきのブラウン管の向こう側で起きていたことの続きを、何通りか考えてしまうのだ。
明るい未来。
予想通りの未来。
最悪の未来。
なんて、予想通りの未来が一番わからなくて、明るい未来は見え辛くて、最悪の未来が一番思い浮かんでしまうなんて、なんて残酷な物語りなのだろう。
と思うのに、あの人はきっとほんのりと幸せだったのだろう。とも感じているわたしは、このまま数日間この結末に浸り続けるのだろう。
いつもそうだ。
たまにそうなる。
目にした物語りが、ベールのようにわたしを纏うのだ。引っ張られれば、引っ張られるほど。
だから泣くのだ。
洗い流そうと、体が浄化を求めているのかもしれない。
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