1人が本棚に入れています
本棚に追加
そのまたあくる日、昨夜訪れた嵐が去り、絵に描いたような青空が広がっている。
わたしの心は、この空のようには晴れてくれない。
あのブラウン管の向こう側の彼がわたしに住み着いて、離れてくれない。
恋をしたわけではない。
けれど、彼のあの表情が、彼のあの言葉が、彼のあの仕草が、忘れられない。思い出しては、思考する。
この感情をなんと言ったらいいのかわからないけれど、考えれば考えるほど、ひとつの物語りが出来そうで、近くにあった、裏の白いどこかからの手紙を目の前に置く。
スマホのメモ帳を開いてもいいけど、なんだかペンを持ちたい気分で、落書きにミニ竜巻を書きながら、彼の物語りを書き始めた。
彼は失ったのだ。
失ったから、わたしの胸を締め付けて、忘れられなくて、こうしてわたしにペンを握らせた。
泣いた。
紙に涙が落ち、字が滲んで読めなくなるほど、泣いた。
書きながら泣いた。
泣ける文章を書けるわたしではない。
けれど泣いた。
泣きながら書いた。
わたしの中で動く彼は、わたしを泣かせた。
泣いて泣いて、だけど彼はわたしから離れてくれない。
その現実にも泣けてきて、今夜も嵐がやって来た。
恋をしたわけじゃない。
憧れを抱いたわけでもない。
だけど、気になるのだ。気になって気になって、彼が気になって仕方がない。
泣きたくなるほど。
泣いてしまうほど。
こんなに泣いたのは、いつ振りだろう。
こんな理由で泣いたのは、初めてだけれど。
最初のコメントを投稿しよう!