朱に交われば赤くなる3

1/14
551人が本棚に入れています
本棚に追加
/590ページ

朱に交われば赤くなる3

「あー、汗ふきシート忘れた」  球技大会当日。  朝のホームルームを終えて教室から体育館へ移動しようという時、あかりちゃんがそう言って肩をすくめた。 「私持ってきたから貸すよ」 「助かる〜〜〜ありがと」  私の申し出に眉尻を下げて軽く手を合わせた彼女に、苦笑する。 「岬、早くして」  廊下を出たところで、狼谷くんのそんな声が飛んできた。  反射的に背筋が伸びて、彼の横を大人しく通り過ぎようと試みていると。 「……あ、」  つとこちらに視線を向けた狼谷くんと、しっかり目が合ってしまった。  私が彼を見ている時はいつもばつの悪い思いをしている気がする。  この前の鋭い視線を思い出して少し緊張した。あれから彼とはまともに話していない。 「おはよ」 「あ、お、おはよう……」  狼谷くんは人当たりのいい笑みを浮かべて、それから私の返事を聞くとすぐに目を逸らした。  ……あれ?  あまりにも通常運転すぎる彼の様子に、私は呆気に取られる。 「はーいお待たせ! 行こっか玄!」 「暑い……くっつくな……」
/590ページ

最初のコメントを投稿しよう!